『円周率100万桁』──読むのか、眺めるのか、桁の海

今回紹介するのは、ある意味で究極の変な本、『円周率100万桁』です。
タイトルそのまま、円周率の数字だけをひたすら並べた一冊
しかし、単なるジョーク本にとどまらず、出版にかける熱意と遊び心が詰まった、奇妙な魅力を持っています。


内容は「円周率100万桁」のみ

本書は、開くと最初に「3.1415926535…」と始まる数字の羅列が目に飛び込んできます。
ページをめくっても、また数字、また数字。
1ページに1万桁がぎっしりと並んでおり、それが100ページ分続く構成です。

つまり、本当に円周率100万桁だけが収録されているのです。
もし途中に誤植があったとしても、ほとんどの読者には気づけないでしょう。
なぜなら、すべて目で追うにはあまりにも桁数が膨大すぎるからです。


価格設定もシャレが効いている

この本の価格は314円
円周率「3.14」にかけた、いかにもな設定です。

さらに奥付(本の最後に書かれる発行情報)にまで遊び心があり、
発行回数が「第3.14刷」と記載されているなど、徹底した悪ふざけぶり。
「出版年を3145年まで待てなかったのか」と突っ込みたくなるほど、細部にまでユーモアが込められています。


出版は「暗黒通信団」

本書を手掛けたのは、知る人ぞ知るインディーズ出版社暗黒通信団です。

暗黒通信団は、

  • 素数をひたすら15万個並べた本
  • 円周率を延々と掲載する本
  • 無意味に大量のデータを並べた本

など、常識の枠を超えた出版物を数多く世に送り出してきた、ある意味で筋金入りの存在です。

その徹底した無駄と情熱、そして時折見せる異様なこだわりによって、コアなファンを獲得しています。


まとめ──無駄の美学

『円周率100万桁』は、

  • 読むための本ではありません。
  • かといって、完全に笑いだけを狙ったわけでもありません。

無意味なことを、徹底的に本気でやる
そのスタンスが、この本の最大の魅力です。

世の中にあふれる効率主義や実用性至上主義とは真逆の場所で、
「本を作るとはどういうことか?」
「読むとはどういう行為か?」
そんな根源的な問いすら投げかけてくるような、不思議な力を持った一冊です。

興味本位でも、話のタネにでも、ぜひ一度手に取ってみてください。
ページをめくった先に広がるのは、無限にも感じる桁の海です。

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