今回紹介するのは、ジョナサン・サフラン・フォアの変な本、『ツリー・オブ・コード』。
これ、普通の本だと思って開いたら最後、本当にぶち抜かれているので注意です。
開いた瞬間、衝撃
表紙を見ただけでは「ちょっと変わったデザインかな?」くらいですが、ページを開くと衝撃。
文字の間ががっつり切り抜かれているんです。
一見、印刷ミスか、乱丁・落丁を疑いたくなるレベル。
でもこれは全部計算されて意図的に削られているのです。
この状態の本を持っているだけで、変な本好きとしてランクが一つ上がること間違いなし。
持っているだけで通ぶれます。
仕組み:もともとの本を削り出して作った
『ツリー・オブ・コード』は、ポーランドの作家ブルーノ・シュルツの原作本をベースに、
そこから必要な文字だけを残して、他をすべて切り抜いてしまうという、前代未聞の手法で作られました。
ページをめくるたび、穴だらけ。
残された文字だけを追っていくと、全く別の新しい物語が立ち上がる仕掛けです。
なお、うっかり背景の透けた文字まで読んでしまうと意味が分からなくなるので、
一ページずつ、丁寧に、今目の前にある文字だけを読むのが正しい楽しみ方。
作るのも大変だったらしい
普通の本なら印刷して終わりですが、
これは各ページに「どこを切り抜くか」の設計図があり、
一冊ずつ、人力で型抜きして作っています。
ネットには製造工程の動画もあって、
- ページごとにカシャンカシャンと型抜き
- それを重ねて本に製本
と、信じられない手間がかかっていることがわかります。
単なるネタ本ではなく、本気の職人技です。
形式に込められた意味
しかも、この「削られた形」自体にも意味があるといわれています。
もとの作家ブルーノ・シュルツはユダヤ系。
第二次世界大戦中に命を落とした彼の背景を重ね、
- 失われた人々の存在
- 削られていった記憶
それらをこの欠けた本の姿そのもので表現している、とも解釈されています。
つまり、単に「変なことをした」だけではなく、
テーマと形式が完全に一致しているのです。
ストーリーは?
正直に言うと、ストーリーは……まだちゃんと読めていません。
というのも、この本、読みにくいんです。
背景が透けているし、慎重に読まないとどこがどこだかわからない。
下敷きを使いたくなるくらい。
でも、それでもいいんです。
この本は、存在しているだけで感動するから。
いくらで買える?
海外取り寄せで購入。
意外にも、1万円あれば買えるくらいの価格帯です。
(思ったより高すぎないけど、メモ帳代わりには絶対できません)
変な本コレクターなら、ぜひ手元に置いておきたい一冊です。
まとめ
『ツリー・オブ・コード』は、
- 物理的に読むのがめちゃくちゃ大変
- ストーリーはちゃんと追うのに努力が必要
- でも、持っているだけで感動できる
そんな一冊です。
本を作るとはどういうことか?
記憶とは、喪失とは?
そんな大きなテーマを、本の形そのもので語ろうとした、稀有な存在。
本好き、変な本好きなら、ぜひ一度体験してみてください。