『変な家』『変な絵』で知られるホラーミステリー作家・雨穴さん。
小説だけでなく、現物を手にして遊ぶタイプの謎解きゲームも制作していることをご存じでしょうか。
今回紹介する『失踪事件のあった地区の回覧板』は、その代表例です。
即日完売した幻のゲーム
本作は2023年に発売され、初回生産1000部が即日完売。
現在はAmazon中古でもやや高値がつく入手困難アイテムです。
形式はタイトル通り「回覧板」。
紙製でパラパラめくれる形になっており、そこに掲載された情報だけで石原みささん失踪事件の謎を解き明かしていくのが目的です。
遊び方:QRコードが鍵
回覧板にはQRコードが印刷されており、スマートフォンで読み取ると専用サイトへアクセスできます。
サイトでは「この回覧板には失踪事件のヒントが隠されている」という案内とともに、事件の謎に挑むゲームモードが始まります。
- サイト上で出題(例:「失踪した人の最後の言葉は何でしょうか」)
- 回覧板を読み、答えを入力
- 正解すれば次のページへ進行
このシステムは、以前雨穴さんが手がけたミステリー写真集『人が消える町』と同じ構成です。
難易度とヒントシステム
難易度は初級編程度で、詰まってもヒントが段階的に提示されます。
- 第1ヒント
- 第2ヒント
……と進むため、謎解き初心者でも必ず最後まで到達可能。
プレイ時間はおよそ30分。集中して解けばさらに短縮できますが、じっくり推理を楽しむのがおすすめです。
雨穴作品らしさ:日常×ホラー
雨穴さんの小説では、日常の中に潜む異様なモチーフが光ります。
- 『変な家』=間取り
- 『変な絵』=絵画
- 本作=回覧板
普段の生活に溶け込んでいる物を題材に、独自のホラーミステリーへ昇華しているのです。
今回の回覧板も、自治会便りやお祭りのお知らせなど“普通”の情報に混じって、不穏な記述が忍び込んでいます。
物語性よりも“パズル性”
小説と違い、本作の物語は最小限。
そのぶん、雨穴さんの論理構成力や謎の配置センスをダイレクトに味わえます。
「ここで読んだあの情報が、この質問と繋がるのか」という発見が続き、ミステリーとしての純度が高い作品です。
実際の同梱資料
作中には、あえて“普通の回覧板”として記された項目が並びます。
- 側溝の金網が外されている注意喚起
- 町空(まちぞら)グランプリ募集
- コロナ禍明けのお祭り報告
- 暑中見舞いのお礼
一見何でもないように見える情報が、後に意外な形で事件と関わる可能性も……。
ぜひ謎が解けたら「お隣に回しておいてください」
まとめ
『失踪事件のあった地区の回覧板』は、
- 入手困難な現物系謎解きゲーム
- 30分で完走できる手軽さ
- 回覧板という日常アイテムを使った異色のホラーミステリー
- 雨穴さんのパズル的センスが詰まった作品
机の上で現物をめくりながら進める体験は、デジタル謎解きとはまた違う没入感があります。
もし見かけたら迷わず確保して、お隣に回す前にじっくり遊び尽くしてみてください。